シネフィルはつかれる

観た映画なるべく書く映画通信。年間watch数300本弱。

後妻業の女

https://youtu.be/vqvIxvyDb14



あらすじ(Filmarks)

「武内小夜子、63歳、好きなことは読書と夜空を見上げること…わたし、尽くすタイプやと思います」結婚相談所主催のパーティで可愛らしく自己紹介する小夜子(大竹しのぶ)の魅力に男たちはイチコロである。耕造(津川雅彦)もその一人。二人は惹かれあい、結婚。幸せな夫婦生活を送っていた、はずだった—。2年後耕造は亡くなり、葬式の場で耕造の娘・朋美(尾野真千子)と尚子(長谷川京子)は、小夜子から遺言公正証書を突き付けられ、小夜子が全財産を相続する事実を言い渡される。納得の行かない朋美が調査すると、衝撃の事実が発覚。小夜子は、後妻に入り財産を奪う“後妻業の女”だったのだ!そして、その背後には結婚相談所・所長の柏木(豊川悦司)がいた。 「結婚相談所に限って言えば、男の高齢者がよくモテる。第一条件は資産があること。持病があればなおいい。看取る時間の効率が良いから女同士の取り合いになったりする・・・」 次から次へと“後妻業”を繰り返してきた小夜子と柏木、二人を追及する朋美と裏社会の探偵・本多(永瀬正敏)、小夜子の次のターゲットでありながら彼女が本気で愛してしまった不動産王・舟山笑福亭鶴瓶)、そして彼らを取り巻くひと癖もふた癖もある人々…。今、愛とお金をめぐるドラマが始まる—!!!

 

「〇〇の女」といえば伊丹十三だが、こちらは伊丹映画の構図へのオマージュを感じられる。それは「女」である主人公の女と、その女の仕事を支える(もしくは敵対する)男の映画。その男女が恋に落ちたり落ちなかったりは映画による。宮本信子大竹しのぶ津川雅彦山崎努豊川悦司。伊丹映画ファンとしては伊丹亡き後のこれには胸が熱くなった。

 

全体コメディタッチで進んでいくが、途中の殺人シーンはしっかりノアールで、その落差が怖かった。コメディに紛れて楽しくやってるけど、実際こいつらがやってることは背筋が凍るようなこと。それこそ1999年森田芳光監督「黒い家」の大竹しのぶを思い出して「ああ、これ笑い事じゃなかったんだ」と思わされる。大竹しのぶの陽と陰の二面性が丁寧に描かれている。

 

豊川悦司は、同監督作の「愛の流刑地」やテレビドラマ「青い鳥」「愛してると言ってくれ」、またはキンチョールのCMなどなどで分かる通り、エロスの天才である。若い頃は爽やか兼ミステリアスで儚い雰囲気を放っていたが、加齢と共に胡散臭さが増し役の幅が広がったように思う。本作では大阪の胡散臭い中年の塊のような人間を体現しており、しかし孤独で寂しい存在であること、自身のステイタスや資産が脆いことから、若い頃に負けない儚さを放っている。そこがエロい。

 

脇を固める尾野真千子笑福亭鶴瓶永瀬正敏らも魅力的で、久しぶりに日本の豪華キャストによる日本らしいエンタメ映画を純粋に楽しんだ。また、永瀬正敏大竹しのぶコンビといえば1992年石井隆監督の「死んでもいい」であり、その劇中でも使われる「黄昏のビギン」を「後妻業の女」で大竹しのぶが口ずさむ。これがまた「死んでもいい」のような惨劇を予感させたりして程よく背筋が凍る。名曲の使い方がうまい。

 

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